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2系統あって紛らわしいコピー&ペースト

  

コピー&ペーストの説明の前に

この記事では、コピー&ペーストの操作方法について解説します。 文書を執筆するにも、画像を作成するにも、ウェブで調べものをするのにもコピー&ペーストの機能は欠かせません。

ただし、コピー&ペーストの解説の前に、もっと基礎的な部分について説明しておきます。

X Window Systemについて

本ウェブサイトでは、ここまでLinux Mintの入門的な内容について解説してきました。 してきましたが、とても大切な部分を紹介していませんでした。 それは、X Window Systemというものについてです。

X Window System(えっくす うぃんどう しすてむ) えっくす うぃんどう しすてむ X Window System(えっくす うぃんどう しすてむ) というのは、UNIX系OSでのウィンドウシステムを提供する規格の名称です。

ウィンドウシステムとは、

  1. 動作しているアプリケーションにウィンドウを与える
  2. マウスやキーボード操作でウィンドウを切り替える
  3. ウィンドウをマウスやキーボード操作で移動する
  4. ウィンドウの大きさをマウスやキーボード操作で変更する
  5. マウス操作やキーボードからの入力をアクティブなウィンドウに渡す

といった部分のことです。 つまり、複数のアプリケーションを同時に実行し、マウスやキーボードでそれらを切り替えて利用することができるのはウィンドウシステムのおかげなのです。

実装は X.Org Server

X Window Systemというのはあくまでも規格であり、実際に動作しているソフトウェアの名称ではありません

実際に動作しているのは、X Window Systemの規格に従って実装されたソフトウェアである X.Org Server(えっくすおるぐさーば) えっくすおるぐさーば X.Org Server(えっくすおるぐさーば) です。 ほとんどのUNIX系OSが X.Org Server を採用しています。

  
20年ほど前までは、PC向けUNIX系OSでは XFree86(えっくすふりーはちろく) えっくすふりーはちろく XFree86(えっくすふりーはちろく) という実装が主流でした。 X.Org Server は XFree86 からの派生です。

X や X11 とも呼ばれる

X Window Systemは略して X(えっくす) えっくす X(えっくす) とも呼ばれます。 また、 X11(えっくすいれぶん) えっくすいれぶん X11(えっくすいれぶん) と呼ばれることも多いです。

  
X Window Systemの現在のバージョンが 11 であるためです。
  

コピー&ペーストは2系統ある

それでは、本題のコピー&ペーストの解説に入ります。 タイトルの通り、X Window Systemのコピー&ペーストには2通りの系統があります。 明示的なコピー操作が必要なものと、必要ないものの2系統です。

  
X Window Systemのコピー&ペーストは、正式名称を "X セレクション" といいます。

それら2系統のそれぞれの名称は、

  1. CLIPBOARD
  2. PRIMARY

といいます。

  
正確には CLIPBOARD / PRIMARY / SECONDARY の3系統がありますが、SECONDARYはほとんどのアプリケーションで使われていません。

CLIPBOARDの概要

CLIPBOARDによるコピー&ペーストは、Windowsでのコピー&ペーストと変わりはありません。 コピーする範囲を選択し、CTRL+Cでクリップボードに情報を格納します。

続いてペーストする先でCTRL+Vを押し、クリップボードの内容を貼り付けます。 難しいことは何もありません。

つまり、

  1. 範囲選択
  2. コピー(CTRL+C)
  3. ペースト(CTRL+V)

の3段階です。

PRIMARYの概要

PRIMARYによるコピー&ペーストは、Windowsに慣れている人にはやや抵抗があるかもしれません。 というのも、利用者が明示的にコピー操作をする必要がないのです。

ペースト操作はマウスの中ボタン(マウスの中ボタン)のクリックです。 マウスの中ボタン(マウスの中ボタン)でクリックすると、貼り付けが実行されます。 では、何が貼り付けられるのでしょうか。 それは、範囲選択されている部分です

つまり、コピーする範囲を選択し、コピー先でマウスの中ボタン(マウスの中ボタン)をクリックすればいいのです。 操作は、

  1. 範囲選択
  2. ペースト(マウスの中ボタン(マウスの中ボタン)のクリック)

の2段階で済みます。

実際の操作

では、テキストエディタを使って実際にコピー&ペーストを行ってみましょう。 テキストエディタを2つ立ち上げ、一方からもう一方へコピーしてみます。

1. テキストエディタを起動する
1. テキストエディタを起動する

上図のようにテキストエディタを起動します。 もちろん、新規ドキュメントが開かれた状態になります。

では、続いて2つ目のテキストエディタを起動しましょう。

2. 2つ目のテキストエディタを起動する
2. 2つ目のテキストエディタを起動する

上図のようにテキストエディタをさらに起動します。

3. 2つ目のタブとして新規ドキュメントが開かれる
3. 2つ目のタブとして新規ドキュメントが開かれる

上図のように最初に起動したテキストエディタの2つ目のタブとして新規ドキュメントが開かれます。 2つ目のウィンドウが開くかと思いましたが、そうはなりませんでした。

仕方がない。 片方のタブを別ウィンドウに分離しましょう。

4. タブをドラッグする
4. タブをドラッグする

上図のように片方のタブをウィンドウ外までマウスの左ボタン(マウスの左ボタン)でドラッグします。 赤色の矢印はドラッグの動きを表しています。

5. ウィンドウが2つに分かれる
5. ウィンドウが2つに分かれる

上図のようにウィンドウが2つに分かれます。 では、見やすいようにウィンドウの位置を整理しましょう。

6. ウィンドウを見やすく配置する
6. ウィンドウを見やすく配置する

上図のようにウィンドウを見やすく配置します。

では、どちらか片方のドキュメントに数行ほどの文章を入力しましょう。

7. 片方のドキュメントに文章を入力する
7. 片方のドキュメントに文章を入力する

上図のように片方のドキュメントに文章を入力します。 今回の例では、

ここが1行目です。
次は2行目です。
そして最終行です。

と入力しています。


では、2行目を、もう一方の文書にコピーしてみましょう。 CLIPBOARDによるコピー&ペーストを行います。

8. 2行目を範囲選択する
8. 2行目を範囲選択する

上図のように2行目を範囲選択します。 これで、範囲選択が完了しました。

次に、コピー操作を行います。

9. 編集(E) -> コピー(C)を実行
9. 編集(E) -> コピー(C)を実行

上図のようにプルダウンメニューの"編集(E) -> コピー(C)"を実行します(またはキーボードのCTRL+Cを押します)。

これで、2行目の内容がクリップボードに格納されました。 あとは、ペーストを行うだけです。

10. 編集(E) -> 貼り付け(P)を実行
10. 編集(E) -> 貼り付け(P)を実行

上図のようにもう一方のテキストエディタのプルダウンメニューの"編集(E) -> 貼り付け(P)"を実行します(またはキーボードのCTRL+Vを押します)。

11. クリップボードからペーストされる
11. クリップボードからペーストされる

上図のように2行目の内容がペーストされました。 このように、CLIPBOARDによるコピー&ペーストはWindowsでの操作と変わりません。


続いては、PRIMARYによるコピー&ペーストを行ってみましょう。 今回は3行目をコピーします。

12. 3行目を範囲選択する
12. 3行目を範囲選択する

上図のように3行目を範囲選択します。 この選択操作により、CLIPBOARDのクリップボードとは別の領域に自動的にコピーが行われます

続いてペースト操作を行います。 もちろん、コピー操作は必要ありません。

13. ペーストしたい先で中ボタンクリック
13. ペーストしたい先で中ボタンクリック

上図のようにペーストしたい先をマウスの中ボタン(マウスの中ボタン)でクリックします。

14. 選択範囲からペーストされる
14. 選択範囲からペーストされる

上図のように3行目の内容がペーストされました。 このように、明示的なコピー操作をすることなくコピー&ペーストを行うことができます。

  
つまり、CLIPBOARDのクリップボードの内容は変化しないということです。

PRIMARYによるコピー&ペーストはミドルマウスペーストとも呼ばれる

PRIMARYによるコピー&ペーストは、"ミドルマウスペースト" とも呼ばれます。 前の記事で登場した『マウスの設定』画面の設定項目の "ミドルマウスペーストを有効化" で有効/無効を切り替えることができます。

  

まとめ

UNIX系OSでのウィンドウシステムは、X Window System という規格に準拠しているものがほとんどです。 実装は X.Org Server と呼ばれるソフトウェアが主流であり、ほとんどのUNIX系OSが X.Org Server を採用しています。

X Window Systemでのコピー&ペーストには2系統があり、それぞれの名称は、

  1. CLIPBOARD
  2. PRIMARY

といいます。

CLIPBOARDは明示的なコピー操作が必要であるため、

  1. 範囲選択
  2. コピー(CTRL+C)
  3. ペースト(CTRL+V)

の3段階の操作が必要です。 一方、PRIMARYでは、

  1. 範囲選択
  2. ペースト(マウスの中ボタン(マウスの中ボタン)のクリック)

の2段階で済むため、コピー操作は不要です。 なお、PRIMARYによるコピー&ペーストは、"ミドルマウスペースト" とも呼ばれます。

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