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スクロールバーの挙動をWindowsに合わせて調整

  

スクロールバーのクリック時の振る舞いのWindowsとの違い

この記事では、マウスでスクロールバーをクリックした時のWindowsとの挙動の違いについて説明します。 また、Windowsの挙動と同じにするための設定方法についても解説します。

スクロールバーのクリック時の挙動を見てみる

ここ数年リリースされたLinux系OSでは、スクロールバーをクリックした時の挙動が "ややクセのある動き" に変わりつつあります。

まずは、Linux Mintの初期設定での挙動を見てみます。 スクロール操作が必要になるアプリケーションを何か実行してみましょう。 MATE フォントビューアがいいでしょうか。

1. MATE フォントビューアを開く
1. MATE フォントビューアを開く

上図のようにLinux Mintメニューから "アクセサリ" -> "MATE フォントビューア" を起動します。 フォントを一覧表示するためのアプリケーションです。

2. MATE フォントビューアが起動する
2. MATE フォントビューアが起動する

上図のようにMATE フォントビューアが起動し、システム内のフォントが一覧表示されます(表示されるまで少し時間がかかります)。 画面内に収まりきらないため、右側にスクロールバーが出現しています


それでは、スクロールバーのクリック時の挙動を確認してみましょう。 まずは、左クリックからです。

  
Windowsであれば "ページスクロール" になりますが、Linux Mintではどうなるでしょうか。
3. 左クリック
3. 左クリック

上図のようにスクロールバーの下端をマウスの左ボタン(マウスの左ボタン)でクリックします。

  
左クリックです。 タッチパッドであれば、指1本でタップします。
4. ワープスクロールする
4. ワープスクロールする

上図のように下端まで一気にスクロールしてしまいました。 これは、"ワープスクロール" と呼ばれるスクロール方法で、クリック位置にまで一気にスクロールします


続いては、マウスの中ボタン(マウスの中ボタン)でのクリック時の挙動を見てみましょう。 中ボタンとは、マウスホイールのことです。

  
Windowsであれば、マウス移動でスクロールできる状態に切り替わります。 ただしそれは、ウィンドウ内であれば別の場所でも同じ操作ができます。 つまり、スクロールバー領域特有の操作ではありません。
5. 中クリック
5. 中クリック

上図のようにスクロールバーの上端をマウスの中ボタン(マウスの中ボタン)でクリックします。

  
中クリック(ホイールのクリック)です。 タッチパッドであれば、指3本でタップします。
6. ページスクロールする
6. ページスクロールする

上図のように少し上方向にスクロールしました。 いわゆる "ページスクロール" です。 これが最も馴染み深いスクロールではないでしょうか。

"ページスクロール" はWindowsであればマウスの左ボタン(マウスの左ボタン)でのクリックです。 ここ最近のLinux系OSでは、マウスの中ボタン(マウスの中ボタン)でクリックしなくてはなりません


最後に、マウスの右ボタン(マウスの右ボタン)でのクリック時の振る舞いを見ておきましょう。

  
Windowsであれば、スクロール用のコンテキストメニューが表示されます。

Windowsのスクロール用のコンテキストメニューについて

 

あまり知られてはいませんが、Windowsではスクロールバーをマウスの右ボタン(マウスの右ボタン)でクリックすることで、スクロール用のコンテキストメニュー(右図)を表示させることができます。

スクロール用のコンテキストメニューには、"ここへスクロール" / "最上部" / "最下部" / "前のページ" などの選択肢があります。

では、右クリックしてみましょう。

7. 右クリック
7. 右クリック

上図のようにスクロールバーの上端をマウスの右ボタン(マウスの右ボタン)でクリックします。

  
右クリックです。 タッチパッドであれば、指2本でタップします。
8. 行スクロールする
8. 行スクロールする

上図のようにほんの少しだけ上方向にスクロールしました。 いわゆる "行スクロール" です。 あまり利用する機会のないスクロール方法ですね。

スクロールバー領域をマウスでクリックした時の挙動についての解説は以上です。 MATE フォントビューアはもう不要ですので終了させましょう。

9. MATE フォントビューアを閉じる
9. MATE フォントビューアを閉じる

上図のように右上の[X]ボタンを押してMATE フォントビューアを閉じましょう。

この挙動も悪くないとは思いますが

このように、最近のLinux系OSではマウスの左ボタン(マウスの左ボタン)でのクリックがワープスクロールになっています。 ページスクロールしたければ、マウスの中ボタン(マウスの中ボタン)でクリックしなくてはなりません

落ち着いて考えれば、これが悪い設計だとは思いません。 今どきのマウスにはホイールが搭載されており、ホイールを回転させることで手軽に画面をスクロールさせることができます。 また、キーボードのPageUpキー / PageDownキーでもページスクロールすることができます。

マウスを接続していないノートPCでも、タッチパッドから簡単にスクロールすることができます。 タッチパッドを指2本でスライドすれば、その方向にスクロールします。 だから、マウスの左ボタン(マウスの左ボタン)のクリックによるページスクロールなんて使う機会はありません。

『それならワープスクロールをマウスの左ボタン(マウスの左ボタン)でのクリックに割り当てよう』、と考えるのも悪くないと思います。

悪くないとは思いますが、Windowsと操作が異なるのは困ります。 ただ、それだけが不満です。

スクロールバーのクリック時の挙動の整理と設定変更の方針

ではここで、スクロールバー領域をマウスでクリックした時の挙動について整理しておきましょう。

クリック種別 Windows
での挙動
Linux Mint
での挙動
マウスの左ボタン
左クリック
ページスクロール ワープスクロール
マウスの中ボタン
中クリック
- ページスクロール
マウスの右ボタン
右クリック
スクロール用の
コンテキストメニューが
表示される
行スクロール

問題は、ページスクロールの操作の違いだということがわかります。 Windowsと同じ感覚で操作するためには、マウスの左ボタン(左クリック)とマウスの中ボタン(中クリック)を入れ替えれるのがよさそうです。

  

スクロールバーのクリック時の挙動を変更する

では、スクロールバー領域をクリックした際の挙動を変更しましょう。 マウスの左ボタン(左クリック)とマウスの中ボタン(中クリック)の振る舞いを入れ替えます。

ただし、正確には "入れ替える" のではなく "Linux系OSでの伝統的な挙動に戻す" という作業になります。 具体的には2つの作業を行います。

実施する2つの作業の概要

まず1つ目が、GTK 3 の設定ファイルを作成する作業です。 ホームディレクトリの下の .config ディレクトリの下の gtk-3.0 ディレクトリの下に settings.ini というファイルを新たに作成し、

[Settings]
gtk-primary-button-warps-slider=false

と記述する作業です。 これにより、GTK 3 で作成されたアプリケーションは "伝統的なスクロール方法" に戻ります。

  
"ディレクトリ" とは Windowsで言うところの "フォルダ" のことです。 Linux系OS(というよりUNIX系OS)とWindowsでは呼び名が異なります。
  
"ホームディレクトリ" というのは、各ユーザごとに用意されているディレクトリです。 自分専用で、他の人からは見ることができないディレクトリです。 なお、管理者ユーザだけは誰のホームディレクトリでも中身を見ることができます。

続いて2つ目が、GTK 2 の設定ファイルを修正する作業です。 ホームディレクトリの下の .gtkrc-2.0 というファイルを修正し、

gtk-primary-button-warps-slider = 0

と追記します。 こちらは、GTK 2 で作成されたアプリケーションを "伝統的なスクロール方法" に戻すための記述です。

  
GTK(The GIMP Toolkit)というのは、アプリケーションを開発するためのソフトウェア(正確にはライブラリと呼ばれる)です。 各種アプリケーションを構成しているボタン・メニュー・スクロールバーなどの部品を提供しています。
  
GTKにはバージョンがあり、今回の作業では GTK 3 と GTK 2 で作成されたアプリケーションのスクロールバーの挙動を変更します。

GTK 3 / GTK 2 の設定の変更

では、GTK 3 および GTK 2 の設定の変更を行います。 まずは、GTK 3 用の設定ファイルの作成から行います。 新たに設定ファイルを作成します

1. テキストエディタを開く
1. テキストエディタを開く

上図のようにテキストエディタを起動します。 自動的に新規ファイルが作成された状態になります。

では、スクロールバーの挙動を戻すための記述をしましょう。 以下の内容を入力してください。

  1. [Settings]
  2. gtk-primary-button-warps-slider=false
 
2. 設定を記述する
2. 設定を記述する

上図のように記述します。 GTK 3 に関しての記述はこの2行だけです。

では、名前を付けて保存しましょう。 ホームディレクトリの下の .config ディレクトリの下の gtk-3.0 ディレクトリの下に settings.ini というファイル名で保存します。

なお、ディレクトリはすでに存在していますので、ディレクトリを作成する作業は不要です

3. [保存]ボタンを押す
3. [保存]ボタンを押す

上図のようにツールバーにある[保存]ボタンを押します。

4. 別名で保存...ダイアログが開く
4. 別名で保存...ダイアログが開く

上図のように『別名で保存...』ダイアログが開きます。 左の一覧の "ホーム" の背景色が青色であることから、今はホームディレクトリが選択されていることがわかります。

ただし、ディレクトリ ".config" が一覧に見つかりません。 存在はしているのに見えないとは、一体どういうことでしょうか。

見えないのは、ディレクトリが隠されているためです。 Linux系OS(というよりUNIX系OS)では .(ピリオド) で始まるファイルやディレクトリは "隠しファイル" や "隠しディレクトリ" と呼ばれます。

隠しファイルも隠しディレクトリも、標準設定は表示されません。 これらを表示するには特別な操作が必要になります。 では、その "特別な操作" を行いましょう。

5. 一覧の任意の場所を右クリックする
5. 一覧の任意の場所を右クリックする

上図のように一覧の何もない場所をマウスの右ボタン(マウスの右ボタン)でクリックします。

6. オプションが表示される
6. オプションが表示される

上図のようにオプションパネルが表示されます。 "隠しファイルを表示する(H)" が未チェックになっていることがわかります。 では、隠しファイルも表示されるように設定を変更しましょう。

7. 隠しファイルの表示をオンにする
7. 隠しファイルの表示をオンにする

上図のようにオプションパネルの "隠しファイルを表示する(H)" のチェックを入れます。 なお、チェックを入れてもオプションパネルは自動的には閉じません。 自分で閉じる必要があります。

8. オプションパネル以外の場所をクリックする
8. オプションパネル以外の場所をクリックする

上図のようにオプションパネル以外の場所をクリックします。

9. オプションパネルが閉じる
9. オプションパネルが閉じる

上図のようにオプションパネルが消えます。 また、一覧に .(ピリオド) で始まるディレクトリが表示されているのがわかります。 つまり、隠しディレクトリが表示されるようになっています

では、ディレクトリ ".config" を選択しましょう。

10. .configをダブルクリックする
10. .configをダブルクリックする

上図のように ".config" をマウスの左ボタン(マウスの左ボタン)でダブルクリックします。

11. .configに移動する
11. .configに移動する

上図のように ".config" に移動します。 では続いて、ディレクトリ "gtk-3.0" に移動しましょう。

12. gtk-3.0をダブルクリック
12. gtk-3.0をダブルクリック

上図のように "gtk-3.0" をマウスの左ボタン(マウスの左ボタン)でダブルクリックします。

13. gtk-3.0に移動する
13. gtk-3.0に移動する

上図のように "gtk-3.0" に移動します。 目的の場所にまでたどり着きました。 後は、ファイル名を入力して保存するだけです。

14. ファイル名を入力して[保存(S)]ボタンを押す
14. ファイル名を入力して[保存(S)]ボタンを押す

上図のように名前(N)にファイル名 "settings.ini" を入力し、[保存(S)]ボタンを押します。

これでファイルが保存されました。 もうこのファイルを閉じても大丈夫です。

15. ファイルを閉じる
15. ファイルを閉じる

上図のようにタブの[X]ボタンを押してファイルを閉じます。


続いては、GTK 2 用の設定ファイルの修正を行います。 設定ファイルは存在していますので、それを開いて修正します。 設定ファイルは、ホームディレクトリの下の .gtkrc-2.0 というファイルです。

16. [開く]ボタンを押す
16. [開く]ボタンを押す

上図のようにツールバーにある[開く]ボタンを押します。

17. ホームをクリック
17. ホームをクリック

上図のように『ファイルを開く』ダイアログが表示されますので、左の一覧の "ホーム" をクリックします。

18. ホームディレクトリに移動する
18. ホームディレクトリに移動する

上図のようにホームディレクトリに移動します。 では、このディレクトリの下の .gtkrc-2.0 を開きましょう。

19. ファイルを選択して[開く(O)]ボタンを押す
19. ファイルを選択して[開く(O)]ボタンを押す

上図のようにファイル ".gtkrc-2.0" を選択し、[開く(O)]ボタンを押します。

20. .gtkrc-2.0が開く
20. .gtkrc-2.0が開く

上図のように .gtkrc-2.0 が開きます。 では、以下の行を追記しましょう。

  1. gtk-primary-button-warps-slider = 0
 
21. 設定を記述する
21. 設定を記述する

上図のように追記します。 GTK 2 に関しての記述も、このように1行追加するだけです。

では、上書き保存しましょう。

22. [保存]ボタンを押す
22. [保存]ボタンを押す

上図のようにツールバーにある[保存]ボタンを押します。

ファイルの変更が無事に保存されました。 もう、テキストエディタは不要ですので閉じておきましょう。

23. テキストエディタを終了する
23. テキストエディタを終了する

上図のように右上の[X]ボタンを押してテキストエディタを終了します。


では最後に、MATE フォントビューアを使って動作確認を行いましょう。 なお、以下の挙動になっていれば成功です

クリック種別 挙動
マウスの左ボタン
左クリック
ページスクロール
マウスの中ボタン
中クリック
ワープスクロール

では、MATE フォントビューアを立ち上げてください。 まずは、マウスの左ボタン(マウスの左ボタン)でのクリックがページスクロールになっていることを確認しましょう。

24. 左クリック
24. 左クリック

上図のようにスクロールバーの下端をマウスの左ボタン(マウスの左ボタン)でクリックします。

  
左クリックです。 タッチパッドであれば、指1本でタップします。
25. ページスクロールする
25. ページスクロールする

上図のように少し下方向にスクロールしました。 やりました。 狙っていた通りの "ページスクロール" になっています。

続いては、マウスの中ボタン(マウスの中ボタン)でのクリック時の挙動を見てみましょう。 クリックした位置まで一気にワープスクロールするハズです。

26. 中クリック
26. 中クリック

上図のようにスクロールバーの下端をマウスの中ボタン(マウスの中ボタン)でクリックします。

  
中クリック(ホイールのクリック)です。 タッチパッドであれば、指3本でタップします。
27. ワープスクロール
27. ワープスクロール

上図のように下端まで一気にスクロールすることができました。 ワープスクロールに成功です。

  
GTK 3 / GTK 2 の設定ファイルは、各アプリケーションが起動時に参照します。 そのため、すでに起動している(Linux Mintメニューなどの)アプリケーションには設定変更は反映されません。 一度ログアウトして再度ログインすることで、全ての GTK 3 / GTK 2 アプリケーションに設定変更が反映されます。
  

まとめ

ここ数年のLinux系OSでは、スクロールバーのマウスクリックでの挙動が変わりつつあります。 マウスの左ボタン(マウスの左ボタン)がワープスクロールに、マウスの中ボタン(マウスの中ボタン)がページスクロールに、マウスの右ボタン(マウスの右ボタン)が行スクロールになります。

GTK 3 / GTK 2 の設定ファイルの gtk-primary-button-warps-slider を無効に設定することで、昔ながらの伝統的な挙動に戻すことができます。

なお、GTK 3 / GTK 2 の設定ファイルは隠しファイルや隠しディレクトリで隠されているため、標準設定のままでは見ることもできません。 『別名で保存...』ダイアログや『ファイルを開く』ダイアログの何もない部分をクリックしてオプションパネルを表示し、"隠しファイルを表示する(H)" のチェックを入れる必要があります。

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